<経歴紹介>
▼ taiga:約10年間、国土交通省に在籍。その後複数の民間企業で経験を積んだのち、2023年3月にチャリチャリ入社。現在は、公共政策部 部長として従事。
▼ rei:約15年間、経済産業省 九州経済産業局に在籍。2023年12月にチャリチャリ入社。事業開発部 事業開発課 課長として従事。
▼ ryo:約13年間、静岡市役所に在籍。2025年1月にチャリチャリ入社。公共政策部所属。
taiga:皆さん、今日はよろしくお願いします!
ずっと官民双方のキャリア形成や、民間、特にスタートアップにおいて、どのように価値を発揮できるかについて深掘ってお話したいと思っていて、ようやく実現しました!
今回は、チャリチャリにおいて官公庁での経験がどのように活きているのかなどお話できればと思いますので、ぶっちゃけ話も含めて聞かせてください!
早速ですが、いわゆる大企業とかメガベンチャーのフェーズになると公共政策部門を持っているケースもある中で、チャリチャリは地方のスタートアップでは珍しく、公共政策にフォーカスして、役人経験者を積極的に受け入れている環境があります。
ただ、非ビジネス領域なので売上に直結するわけではないですが、事業特性上、重要な存在ではあると思っています。
経営のコミットが前提になるので、まずはこの考え方や貢献できるイメージについてiemotoさんはどう考えていますか?
iemoto:taigaが入社する前の段階では、シェアサイクルとまちづくりという文脈の中でも、シェアサイクルの比重が重かったんだよね。
ボトムアップ型のまちづくりを意識し始める前は、一人で抱えて向き合っている課題が多かった。
専門性はもちろん、会話のプロトコルが合うか合わないか、役所のロジックの理解もそうなんだけど、噛み合わないことが多かった。
そこでなぜわかってくれないんだと文句を言うのは簡単で、役所の思考性の解像度を高めないとフェアじゃないと思った。
役所の皆さんも頑張っているし、官民で同じ目線で事業に向き合いたかったという課題感が強くあって。その中で、やらなきゃいけないと思っていたことは大きく二つ。
シェアサイクルという新しいサービスに対するルールメイキングの視点。
もう一つは、法の遅れ(Law Lag)について。既存の法規制が想定していない事象に対して、サービス実態と法規制にギャップが生じてきて、民間事業に支障が出てきてしまうこと。
昔、中国で事業をしていたときに、シェアサイクルもタクシーアプリもそうなんだけど、規制が存在しない市場でサービス展開されてて、その後で政府が規制強化していくという流れを経験して。
それに対応できる事業者が生き残って対応できないと退場していく。これが中国におけるイノベーションの流れだと感じたときに、政府側の考えとか会話のプロトコルを理解して、批判するんじゃなくて、一緒に考えていけるようになりたいと思ったところが最初の入り口だったんだよね。
当時は転職するとかそこまで考えてなかったと思うけど、taigaが入社する前に何回か話す機会があって、話す中で特に盛り上がったのがリボルビングドアの話だったんだよ。まさに官民の人の行き来の中で、一緒に考えていける環境を作っていけたら面白いと思って、それもきっかけだったかな。
taiga:キーワードとして、価値基準という言葉もあるかなと思うんですよね。チャリチャリ側と役人が大事にしている視野と価値観が実は近いんじゃないかなって。
広さで言えば、最近は海外連携の話があるし、深さで言えば、法律や税制の話もあって。iemotoさんと話す中で、チャリチャリの事業特性が、いち民間事業を超えた価値観があると思ったことが入社の一つのきっかけになったんですよ。確かに最初は転職する気がなかったんですけど、役所を出たときの想いを実現する場として良い場所だと思いました。
reiさんとryoさんも、役所でモヤモヤすることを抱えつつ、チャリチャリで実現したいことがあって入社されたと思うんですけど、実際にチャリチャリに入社されてどうですか?
rei:経産局にいる中で経産省の一番のミッションは、事業者にいかに利益をもたらす環境を作れるかということで。役所の理屈や理論で考えたときに、本当に事業者のためになっているのかな・・・と疑問に思うこともあって、そこはモヤモヤすることも多かったですね。
新卒で入省した時は地域の経済の活性化につながることがやりたいと思っていた中で、スタートアップは広い視野を持ちながら地域課題を解決するという世界観や働く人の思いに共感する部分が強くてそこに惹かれました。結局、居場所が違うだけで、実現したいことは一緒だなと感じたんですよね。
経産省では社会課題・地域課題の解決を目指す成長期待のあるスタートアップを「J-Startup」企業として選定をしているのですが、そのローカル版「 J-Startup KYUSHU」の選定に前職で携わる中で、チャリチャリは身近なサービスだったし、iemotoさんの思考性がとても面白かったということが、自分もチャリチャリの一員としてチャレンジしたいなと思ったきっかけです。
いまも役人のときからやりたいことが変わったということは全くなくて、九州の地域経済の発展に貢献したいという想いを強く持って日々仕事に向き合ってます!
taiga:確かに、地域に強くコミットするというのはチャリチャリの特徴ですよね。ryoさんは今年の1月に入社して半年が経ちますがどうですか?
ryo:私はtaigaさんやreiさんと少し違って、地域に対して貢献したいという想いはもちろんありつつ、チャリチャリで何ができそうかという思考はあまりなかったというのが正直なところですね。
シェアサイクル事業についてというよりも、そもそも自分自身が何者になりたいかという思考が中心にありました。
ただ、考えれば考えるほど答えはでない論点なので、求められる場所で全力を出そうという考えに至ったんです。そんな中で、taigaさんから誘いを受け、面白そうなことをやっていると思ったのがチャリチャリに興味を持ったきっかけでした。
選考を受けようとしたときにiemotoさんのことも調べて、シェアサイクル事業に留まらない視座とか地域に対する想いを含めてより面白いと思うようになって入社を決めました。
とは言っても、私は家族もいて静岡から仕事をすることもわかっている中で、静岡に住んでいる人間を採用することは会社にとってかなりチャレンジだったんじゃないですか?
iemoto:悩んだのは事実だよ。笑
ロケーションで悩むというのはこれからもあり得る話ではあるかな。ただ、大前提として役所にいたからといって、行政機関を相手にする仕事を担ってもらおうとは思ってはいないんだよね。
taiga・rei・ryoは現時点では最前線で数字を追う営業マンじゃなく、バックグラウンドが活かされる仕事をやっているけど、大事にしたいのは、その時に必要なことをやれる気持ちがあるかどうかかなと思っていて。
それと合わせて、言われたことだけをやるというマインドじゃなくて自分の役割を超えて動けるかどうかとか仕事はいくらでも転がってるから、それを面白いと思ってもらえるかどうかもということもすごく大事だね。
rei:その点で言うと、役所は縦割りで組織ができていて、個々の守備範囲がしっかり決まっている世界なので、ここにいる3人は役所にいたときにすごく変わった存在だったのではと思ってます。笑
ryo:自分は郷に入れば郷に従うタイプなのでしっかりした公務員だった、、、はずです!
taiga:自分もまともな役人だと思ってたんだけどな。笑
さっきryoさんが私に声をかけてもらってっていう話をしてたけど、ryoさんに声をかけたのは、この人面白そうだなと思ったからという感覚があったことと既存の枠組みからはみ出すことを楽しめる人なんじゃないかなと思ったからなんです。
上流で何を考えるべきかを理解できて、足元のタスクをこなせるかが大事だと思っていて。だけど決まったことだけやるのも違うよねという思考ができるかどうかがチャリチャリにフィットするタイプなんじゃないかなと。
これはスタートアップ全体に当てはまる話かもしれないですけど。
静岡から仕事をするという話もありましたけど、地域にコミットする必要性はありつつも、地域に閉じる必要はないと思っているんですよね。
地元から外に視線を向けることで、いつもの地元のまちの景色がより違って見えるという発見があると思うし、その視点が巡り巡ってチャリチャリのまちづくりの思想に還元できるかもしれないから視野の持ち方なんだろうなと。
ちなみに、ryoさんは役所を出てから1社民間企業を経てチャリチャリに入社してくれましたが、1社目と2社目で自分の中で心境の変化ってありましたか?
ryo:うーん、心境はそれほど大きく変わらないんですよね。
戸惑うことはあったんですよね。例えば仕事で使うワードが聞き慣れなくて。笑 いろいろとキャッチアップしながらやってきました。
チャリチャリならではで言うと、iemotoさんと近くで仕事ができるので、事業のスケールの仕方とか経営視点の考え方を学べるのはすごくありがたいですね。
組織が大きいとなかなかできないことなので、スタートアップの意思決定の在り方を体感できているのは期待していた以上に良かったことです。
あとは情報がオープンなところも新鮮でしたね。会社の財務的なところって会社によっては従業員に開示しないところも多いと思うんですけど、チャリチャリでは毎月見れる。これって会社が今どんな状況なのかわかって社員のモチベーションも上がると思うんですよね(社員によってはモチベが下がることも懸念されますが、、)。
rei:私はチャリチャリに入社して、自分の中で一番変わったなと思うことは、’’思考のクセ’’ですかね。行政にいると、どうしても単年度予算の中で物事が動いていくので、どうしても目線が近視眼的になってしまうんですよね。そうなってしまっていることにも、私は当時自分自身で気づけていなかったと思います。スタートアップの醍醐味なのかもしれませんが、実現したい大きな世界観の中で、それを実現するためにはどうしたらいいのか?というバックキャストで物事を考えるクセが少しずつですが、身についてきたのかなぁと思ったり。周りもみんな、そういう目線なので自分の成長につながるありがたい環境だなと感じています。
それと、もう一つ戸惑ったのは、入社当時、slackでiemotoさんに直接メンションすることにドキドキしたことですね、今でも覚えています。笑
iemoto:その感覚は面白いね。笑
経営者として、情報量が多すぎてしまうことはよろしくないと思う一方で、早く判断したい気持ちがあるからどんどん教えてほしいとも思ってるからどんどんメンションしてほしいな。
taiga:役所を出て1社目で同じようにすごく新鮮に感じたことを思い出しました。
経営陣にもslackのメンションが飛び交う景色がすごいなと思ったんですよね。役所にいた頃は、6〜7割で資料を上司に見せにいくというよりは基本的にはFIXさせる気持ちで作り込んでいた気がします。
無謬性というか失敗できない組織だからこそだと思いますが、このあたりの情報伝達の考え方は違うかもしれないですね。
iemoto:アプローチの違いだよね。最後に10割を目指すのはどの組織でも同じだけど、衆知を集める方が正しい意思決定に近づくと経験則で思ってて。
経営哲学の話だから、経営者だから・スタートアップだからということで一括りにはできないけどね。スタートアップでも下から意見をあげていく会社はあるしね。
taiga:4月から組織が変わって、組織図的には縦割りになりがちですけど、横軸を通す役割が必要で、そうしないと硬直化していきそうだなと思っているので、情報伝達方法含めて、はみ出す存在がより重要で、面白いフェーズだと思いますね。
iemoto:ここ数年の学びとして、自分自身の専門性が事業をリードするというか、一番知っている状態が適切だと思って経営してきたんだけど、チャリチャリは事業の広がりが特殊だから、一人で全部カバーするのは無理だと思ってる。
タイヤの太さ・空気圧から建築基準法、政治・・・挙げればキリがないんだよね。それぞれの専門性の中で自分より詳しい人を採用したいと思うようになったことも、3人に入社してもらったことに関係してるね。
各領域のプロフェッショナルがいる状態がいまの事業フェーズに求められることかもしれないね。
taiga:入社した2年前と比較しても変化しているのは感じていますね。最終的な意思決定の少し前からiemotoさんが入って方向づけていくフェーズから、いまは柱が複数存在するので、事業と組織に拡張性が出始めたと感じています。
iemoto:これだけ転職が当たり前になっている中でも、官民の流動性はまだまだ低いし壁が高いよね。若手の役人がキャリアチェンジを求めるという風潮はあるにしても、40〜50代の役人が転職することはほとんどないし、専門性を活かしてもっと流動性を高めていく世の中になってほしいと思うよね。チャリチャリの事業としても、民間経験者のみでは難しいところもあるし。
taiga:役所にはすごく優秀な人たちがたくさんいると思ってます。ただ、力の入れ方とか注力するポイントが民間と違うだけで、リボルビングドアの話も個々に話すと共感してくれる人たちは多いんですよ。
それが組織が主語になると動かなくなるので、役所を出る時に考えていた、流動性を高めていくことを組織単位でやっていければ良いなと思っています。
ryo:それすごくわかります。個人としては優秀だけど、組織力学の問題はあると思いますね。官から民だけでなく民から官への動きももっと増えると変わってくるかもしれないなと思います。
iemoto:単純に機能の部分だけ切り出すと、コンサルにお願いすることで十分なのかもしれないけど、想いとしては、事業の中でうまくミックスさせたいと思ってるんだよね。垂直統合の事業モデルに紐づくことでもあるけど、一緒に物事を進めたい気持ちが強い。
taiga:reiさんは、そういった点で経産局にいたことで感じることはありますか?
rei:事業会社に転職することのハードルはあるかもしれないですね。私の場合は、行政の支援する立場から、プレイヤーとして現場感・手触り感を味わいながら働いてみたいなという思いがありましたね。
taiga:キーワードとして手触り感があると思いますね。それを感じたいから役所を出たいという人たちは多いと思います。
ただ、例えば、急に自分で営業活動して売上を生み出せるかというと難しいし、だから親和性の高いコンサルに行くパターンが多いと思うんですよ。チャリチャリの場合、そこが結構ユニークで、数字を自ら生み出すだけではない価値を発揮できる場所だと思っています。
ryo:手触り感、すごくわかります。自分も転職1社目はコンサルでしたが、やはり人の事業に対してあーでもないこーでもないっていうのが、それが仕事なんですけど自分の中ではあっていなかった(決してコンサルを否定してるわけではありません)。
iemoto:3人を見ていて面白いのが、行政文書を読み解けること。施政方針演説とか予算とか法律とか、書かれたことで何が起きそうか、この文言が入っているということは、現場でどういう議論があったのかとかプロセスをイメージした上でどういうメッセージなのかを理解できていることが大きいよね。視野が複眼的になるっていうのはこういうことだと思うよ。
taiga:民間に転職して1社目で思ったこととして、意外とみんな法令読めないし解釈も全然わからないんだということですね。通達とかだと読みやすいかなと思っていたけど、全然そういう訳でもなかったです。
その点、iemotoさんは普通に読めるし解釈できるということで、かなり仕事はしやすいと感じています。
iemoto:趣味だからね。笑 趣味だから限界はあるけど。これは運用でできるんじゃない?とか思っちゃう。できない理由として、やる気の問題だけじゃなくて知らないだけかもしれないからそこを会話していきたいね。
taiga:法令レベルでできないのか、運用でできるけどやっていないのかの2つがあると思っていて、後者のケースは結構多いので、前例を示して気づかせてあげるとレバーが動くこともあるかなと。それができるのがチャリチャリの面白さでもあると思ってます。
非ビジネス領域ではあるので、うまくビジネス側の要求と整合性を取らないといけないですよね。例えば、政策渉外も事業活動の一部だし、組織に貢献することで立ち位置を確立していく必要があるなと思います。
もちろん、それだけでは足りないので、入社当初のミッションに加えて、エリア展開をディレクションからやるというタマを持つことにしました。
事業側との接点を強く持つことで、入社時の立ち上がりにも効いてくると思っています。
iemoto:いずれにしても言われたことだけをやるスタンスではないということが大事だね。
taigaが前に言っていた、グループ内にシンクタンクを作るべきかもしれないという話があるけど、事業を進めていく中で、チャリチャリ個別の事業だけでなく、他の事業も俯瞰して見ていく中で感じたことも、チャリチャリでは難しいよねとなって捨ててしまうアイデアもあるけどそれってもったいないよねと思う。
究極的には、直接チャリチャリに利がないことでも世の中が良い方向に向かっていく中で、副次的にチャリチャリにも影響が出てくるとか、そういう未来もあるんじゃないかなって。いますぐはそこまでできないけど、将来的には考えたいね。
taiga:たしかどこかでチャリチャリ総研を作りたいって言った気がします。笑
iemoto:大事なのはしっかり事業活動の一環として組み込まれていること。独立した組織ではなくね。事業だけ考えると3ヶ月で結果が出ることに注力せざるを得ないけど、もっとロングタームで考えたいことがあるし、何よりまちづくりってそんなに短期で結果は出ないよね。
taiga:まだまだ話が尽きないので次回以降もやりたいのですが、次回以降は、他社の公共政策部門の人たちとのお話とか、役所との人たちとのお話とかやっていきたいですね。
皆さんありがとうございました!